動物虐待厳罰化、8週齢規制…動愛法が改正
―今月より、動物愛護管理法の改正が段階的に施行されます。この改正のプロセスには、杉本さんも深く関わってこられました。
杉本 5年に一度の改正で、今回4回目を迎えます。改正の度に少しずつ成熟はしていますが、一足飛びにはいきません。課題が多く、5年に一度では進まないのが現状です。
改正の一つに「動物虐待に対する厳罰化」があります。これまで一番重いものは「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」とされていましたが「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」に改められました。これは「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者」に科せられます。
また、来年からは出生後56日(8週)を経過しない仔犬や仔猫は販売できないという「8週齢規制」が施行されます。(札幌市は努力義務として、2018年より8週齢規制)
しかしこの規制は、法改正の可決前に「秋田犬保存会(会長/日本維新の会・遠藤敬衆院議員)」と「日本犬保存会(会長/自民党・岸信夫衆院議員)」にねじ込まれ、「日本犬」だけは対象外となりました。
従来通り、6種の日本犬(柴犬・紀州犬・四国犬・北海道犬・甲斐犬・秋田犬)は生後49日を超えれば販売可能ということです。しかし免疫力の低い仔犬は、母犬と1日でも長く共に過ごし、社会性を身につけるべきです。今後は、日本犬だけ除外になった附則を削除し、また、8週にこだわる必要もないので、臆することなく声を上げていきたいです。
2022年からの施行になりますが、事業者の個体識別用マイクロチップ装着の義務化が決定しました。これによって万が一迷子になっても、飼い主がスムーズに判明されるようになるはずです。
〝殺処分ゼロ〟ではなく〝保護犬猫ゼロ〟を目指す
―犬や猫の殺処分数は減少傾向ですが、長年里親が見つからず、動物管理センターや保護団体のシェルターで暮らし続けるケースもあります。
杉本 極端なことを言えば、殺処分を免れただけ、です。それで幸せと言えるでしょうか。殺処分ゼロというのは数字だけの話しであり、決して評価できるものではありません。
命が繋がっても、彼らがストレスを抱えた状態で、医療も適切に受けられなければ、これもある意味ネグレクトです。1頭ずつの幸せが確保できて初めて、問題解決と言えます。
生体展示販売の裏側を知ってほしい
―杉本さんは「命の店頭販売はいらない」と強く提言されています。生体展示販売の〝裏側〟について教えてください。
杉本 どんな業界でも形ある商品には、必ず在庫や消費期限切れ、不良品というものが存在します。残念ながら命が商品になっている以上、彼らにも同様のことが当てはまるのです。
明るい照明に優しいBGM、小さくてフワフワした仔犬や仔猫が抱ける店内は、一見、愛に満ちた場所に感じるかもしれません。
ですが、騙されないでください。「ここだけは健全なお店だろう」と感じても、店頭販売をしている限り、必ずダーティーな部分は存在します。
仔犬や仔猫が店頭に並べられるまでに、どのような行程があるかを想像してください。繁殖屋からオークションにかけられ、店頭にたどり着くまでの流通過程で、どれだけの幼い犬や猫が命を落としているかは不明です。その段階で亡くなった数は殺処分数には反映されません。唯一無二の尊い命は、闇から闇へと葬られます。
売れ残ったり、体調を崩した犬猫はどうなるでしょうか。健全に見えるペットショップのバックヤードには、彼らにとって、生き地獄のような日々が存在します。
一方、商売を規制するというのは、日本の法律では極めて難しいこと。業に対し適正化をはかるため、私たちの働きかけも必要ですが、一番大切なのは〝消費者意識が高まること〟と言えます。
「ペットショップで購入するのはアンモラル」と意識改革されない限り、命の大量生産、大量販売がなくなることはありません。需要がある限り、そのビジネスが淘汰されることはないからです。これは、ペットショップで購入した方を批判している訳ではありません。最初はみな、ご存知ないわけですから。もしペットショップから動物を迎えたら、家族としてその一生に責任を持ち、大切に育ててください。次にもし動物をお迎えするときは、ぜひ行政や愛護団体から、保護動物をお迎えしていただきたいです。
日々、健全風に装う手口が巧みになるペットビジネス。真実を見ようとする消費者の目が、未来の動物たちを救います。
以前に比べ、保護犬猫の存在を知る人が増えているのは、喜ばしいことです。犬や猫を迎える際には、動物管理センターや保護団体、もしくは本当にモラルあるブリーダーを選択してほしいと願います。
次回「人と動物が幸せに共生するために」は、 6月8日公開予定です。
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