「突然ですが、ララが〝虹の駅〟へと旅立ちました。今週から呼吸が荒く、病院に行くと、極度の貧血でした。赤血球が減少して危ないと、点滴やレバーの缶詰めをスポイトで与えましたが、6月6日午後11時50分、終着駅へと旅立ちました。
愛するペットが亡くなった際、よく〝虹の橋へ旅立った〟と表現しますが、ララは駅長でしたから、虹の駅へ向かったのだと思います」(飼い主の高橋一正さん)
6月7日、「わんにゃんハート」のもとに、ララの飼い主・高橋さんから上記のメッセージが届いた。
新十津川駅で駅長犬を務めてきた柴犬のララ。わんにゃんハートの前身「わんハート」にも、有名な看板犬として、度々登場していた。
ララはNPO法人「しっぽの会」出身の元保護犬で、約3年間、里親になった高橋さんのもとで可愛がられた。
新型コロナウイルスの影響で、最終運行が前倒しになった札沼線。4月17日のラストランには、ララも駆けつけ、およそ100人と共に見送った。
ララが亡くなる1週間前のこと。高橋さんはラストランを振り返り「ほとんど事前予告ナシの最終運行。本来であれば、本州からあと5倍の人たちが見送りにくると予想していました。たくさんの人や報道陣がララを見つけ、引っ張りダコならぬ、引っ張り犬でした」と話していた。
追悼の意を込めて、わんハート12号(2017年10月25日発売)に掲載したララの記事を下記に再録する。
(年齢などは、掲載当時のまま)
「かわいい~!」
ララの周りには、子どもから大人まで、多くの人が集まる。その場所は、JR北海道が廃線の方針を示している札沼線の終着・新十津川駅。ララは毎週末〝小さな駅長〟として、札沼線の存続を応援している。
誰が触っても動じず、いつも穏やかなララは、アイドル的存在。しかし、今年1月に飼い主が亡くなり、函館保健所に収容されていた過去を持つ。
NPO法人「しっぽの会」が引き取ったところ、現在の飼い主・高橋一正さんとの出会いがあった。
高橋さんは「ララを通して、札沼線を知ってもらえたらうれしいです。保護犬にも興味を持ってもらうことで、ララの仲間たちを救うきっかけになれたら」と話し、札沼線と保護犬の未来を願っている。
「名駅長ですが、ゴロンと横になって職務怠慢なことも(笑)。推定10歳なので、多めに見てくださいね。ご褒美には、大好きなあずきアイスをちょこっと、です」(高橋さん)
ララは7日14時頃、荼毘に付された。高橋さんは火葬の前に、ララが生きた証として、しっぽの毛を残した。
「ララの毛を少しだけ、いただきました。あまり切ると、向こうの仲間たちに笑われたら可哀想ですから」と高橋さんは微笑む。
高橋さんはララとの3年間を振り返り、下記のように話す。
「新十津川駅が廃止になり、駅長犬の手記をまとめようとした矢先の別れでした。思い出すのが辛く、手記の完成は先になりそうです。
元気なうちに、ララのふるさと、函館にも行こうと思っていました。コロナで見送ったのが、心残りです。
3年あまりの暮らしでしたが、ララとは何十年も一緒に過ごしたように感じます。
いまは心が痛くて仕方ないけれど、保護犬だったララを迎えることができて、本当に幸せでした。
新十津川駅は、鉄道ファンだけが集うところではなく、都会からさまざまな悩みや思いを持った人々がやって来ていました。
窓からララを見た乗客は、みな安心した表情に変わります。折り返し列車は、笑顔が増えて出発するのです。愛犬を亡くして間もない人もおり、ララが心の整理をお手伝いできたこともありました。
ララを可愛がってくれたみなさん、応援してくれたみなさん、本当にありがとうございました」