野生動物との共生も視野に入れてほしい
―野生動物についてお伺いします。近年、全国的にクマが出没し、ときには駆除されるケースもあります。北海道も同様で、昨年はヒグマの駆除に関し、賛否両論を呼びました。
杉本 ニュースで見るたびに、何とも言えない気持ちになります。ヒグマたちに罪はなく、ただ食料を求めて人里に降りてきているだけです。
人命第一なのは承知の上ですが、もっと双方を守るための努力ができなかったのかと疑問です。クマだけを悪者にし、頭ごなしに駆除するのは罪深いと感じます。
先日、富山に行きましたが、あちらでは1日に何度もクマが銃殺されるニュースが報じられ、胸が痛みます。
こういう悲劇を招いているのは、地球環境の破壊によるものです。人間中心で経済が最優先という考え方があるかぎり、環境を破壊しつづけます。これでは動物の苦しみと、あらゆる生物の犠牲に終わりはありません。
それは結局、私たち人間にも返ってくる問題であることを自覚し、自分のこととして考え、問題の本質を知り、自然保護の価値を全国民で共有する必要があると思います。すべての命への畏敬の念を持ち、持続可能な社会を築くことが大切です。
私たちと野生動物の暮らす境界線が曖昧になっているのは、結局すべて、人間の責任です。人間と野生動物の共生を視野に入れた開発を望みます。
犬猫に優しい世界は、人にも優しい
―最後に、杉本さんの活動において、やりがいや喜びを感じる瞬間を教えてください。
杉本 Evaは2月で6年を迎えました。団体を立ち上げる前から「動物の虐待防止」と「アニマルポリスの設立」は、自分の軸になっていました。
長い時間を要しましたが、法改正の実現や、大阪でアニマルポリスがスタートしたのは、目に見える結果です。喜びはひとしおで、自信にも繋がりました。
どんなことも飛躍的にはいきません。「いつか必ず変わる日が来る」と信じ、諦めない心で活動しています。
また、Evaの活動を見て「価値観が変わった」、「影響を受けて保護活動を始めた」というお声をいただくことがあります。
子どもたちの心にも響き、動物をテーマにした作文が入賞した、というご報告も耳にしました。啓発の意義を実感できる瞬間であり、報われた気持ちになります。
犬や猫が幸せに生きられる社会は、きっと人にとっても幸せに暮らせる社会です。今後も双方が心豊かに共生できる社会の実現を、全力で目指します。
―ありがとうございました。
【杉本彩さんのインタビューを終えて】
幼い頃、バラエティー番組が企画する社交ダンスで、目を奪われた杉本彩さん。華やかな雰囲気は、テレビで拝見しているお姿、そのままでした。インタビュー中は真摯に耳を傾けてくださり、動物愛が溢れていました。杉本さんご自身も、たくさんの保護犬・猫と暮らされています。
杉本さんの落ち着いた口調で語られる動物愛護や、改善していかなければならない悲惨な現実は、胸にドスンと響くものがあります。改めて、1人ひとりの訴えは微力でも、諦めずに声を上げ続けていくことが、動物たちの幸せな未来へと繋がるのだと感じました。
杉本さんをはじめ、「Eva」の理事・事務局長を務める松井久美子さん、ご縁を繋げてくださった旭川のNPO法人「手と手の森」さん、本当にありがとうございました。
(編集・後藤)