今回のコラムは、私の昔話を1つ、みなさんに〝あえて〟お話しようと思います。過去に1ヵ月ほど生活を共にし、〝返品〟した犬についてです。

その犬は、生後60日過ぎで我が家にやってきました。神奈川県のブリーダーから購入したワンコです。評判のいいブリーダーを道内外で探し、そのブリーダーにたどり着きました。1年ほどやり取りをする中で、彼らとの信頼関係を築き、購入に至りました。

生後2度のワクチン接種はブリーダーでしてくれていたので、かかりつけの獣医に3度目のワクチンを打ちに行きました、すると「この子はパテラですね、ステージ2です」と言われました。

私は耳を疑いました。確かに少し変な歩き方をするなとは思っていましたが、ワクチン接種が済むまでは、自宅にいる先住犬との接触をさけるために、1カ月ほど、必要な運動時間を確保しながら、ケージ中心の生活を送っていたからです。つまりは飛び跳ねることは不可能ですし、そもそも子犬はそんなに飛び跳ねません。まだよちよち歩きですからね。

そして何より、購入時にブリーダーからは「各種検査もしており、健康です」というお墨付きをいただいていました。状況的に我が家に来てからの発症(後天性)ではなく、先天性のパテラでした。

ペットはモノではありません。たとえパテラであっても、1カ月も一緒に暮らせば当然、気持ちとしてはもはや家族です。しかし、パテラはこの先一生つきまとう問題であるということ、動物病院への受診頻度もそうですし、先住犬との兼ね合いもあります。たくさん悩みました。私が決断した答えは〝返品〟でした。

ここは「かわいそう」とか「薄情だ」とか「モノ扱いするな」と、賛否が分かれるポイントだと思います。一部の動物愛護者からの批判覚悟で私は発信しています。

一場面を見ると〝かわいそうな犬〟という話ですが、全体を見ると〝売買契約とは異なる商品を販売したブリーダー〟という話です。いつしか論点がすり替わり、「犬がかわいそう」になるわけです。

1カ月生活したわけだし、家族だからと、そのまま迎える入れる飼い主もいるでしょう。しかし、それは飼い主の〝情〟の搾取ではないでしょうか。最も糾弾されるべきはブリーダーのはずが、飼い主にその矛先が向かう。こうした世の風潮をとても怖く思います。

もちろん、私はこの出来事を忘れることはありませんし、最後に私を見つめた犬の表情も鮮明に覚えています。また、一生モノの罪悪感も当然あります。こうした人間の心理を巧みに利用しようとするペット販売業者がいるということをお伝えしたいのです。

私は悩んだ末に、確固たる意思を持ってブリーダーに〝返品〟の連絡を入れました。結果的に返品に応じていただけましたが、「こちらに来てから発症したのでは?」「一緒に暮らしていたのに送り返すのはかわいそうでは?」という言葉もいただきました。

こうした状況に直面した際、多くの人が泣き寝入りしてしまうのではないでしょうか。しかし、情だけではなく、お金の問題もあります。パテラの生涯医療費は、ゆうに数百万円はかかります。飼っている中で発症するのあれば、それは飼い主の責任でしっかり最後まで面倒を見るべきだと思いますが、今回のケースでは意味合いは異なります。

防衛策としては、健康診断をしていますと言われても、ご自身でも即座に動物病院を受診したほうがよいでしょう。私の今回の発信が、一部のペット販売業者の襟を正すことにつながればと、心から願っています。

※画像はすべてはイメージです。

【筆者紹介】
津田 芳典(つだ・よしのり)

1980年札幌市生まれ。大手不動産賃貸会社で7年間勤務後、不動産管理会社に転職。11年不動産管理会社を設立。24年に会社売却し、第二の人生として新たなスタートを切る。愛犬4匹(トイプードル、チワワ)と暮らす。

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