日本の動物福祉向上を目指す公益財団法人動物環境・福祉協会「Eva」(東京都渋谷区)。
代表理事を務める女優の杉本彩さんは「ペット流通」、「動物虐待」、「多頭飼育崩壊」、「不適正飼育」など、私たちの身近で起きている動物問題について啓発をおこなっています。
杉本さんは昨年11月24日、旭川のNPO法人「手と手の森」主催の動物愛護シンポジウムにて、動物愛護法改正や、アニマルポリス設立についてなどを提言されました。
講演後、杉本さんに「アニマルポリス」の必要性、動物問題についてなどをインタビューしました。3週に分けて、お届けします。
大阪で日本初のアニマルポリスを設立
―杉本さんは大阪で「おおさかアニマルポリス」設立までを支え、牽引されました。アニマルポリスについて、教えてください。
杉本 動物は私たちと同じように感受性があり、同じように苦痛も感じます。動物を尊い命として、さまざまな虐待から守り、動物の福祉を実現しなければいけないと思っています。それは一般飼養者のもとにいるペットや販売のために繁殖させられる動物、そして展示動物や実験動物、産業動物も同様です。
「アニマルポリス」とは、主に動物殺傷や遺棄、ネグレクトといった虐待について対応する専門機関のことです。海外では通報を受けると、問題のある場所に赴いて状況確認し、改善の指導を行います。ときには被害にあっている動物を保護することもあります。動物虐待=犯罪であると知らせることで、抑止にも繋がりますよね。動物先進国であるヨーロッパやアメリカなどでは、メジャーな機関です。
大阪では吉村洋文知事のご尽力により、昨年10月から施行されました。私は「おおさかワンニャン特別大使」を委嘱されてからの2年間、吉村知事が市長時代から、アニマルポリスの必要性などをご説明してまいりました。吉村知事が熱心に耳を傾けてくださったのはもちろん、その推進力とスピード感に驚きました。改めて、結果を出してくださる政治家が必要だと感じています。私たちにとっては、結果がすべてですから。
アニマルポリスの設立は、Evaにとっての悲願でした。長い道のりでしたが、訴え続けてきたことが実現し、報われました。
動物や子ども、社会的弱者を守りたい
―北海道では昨年、2歳の女児が虐待死するという事件がありました。その現場にはネグレクト状態の猫もおりました。北海道にも「アニマルポリス」が設立されることにより、双方への虐待抑止にも繋がると考えられます。
杉本 日本では動物が虐待されていても、なかなか適切に保護されないのと同じで、人間の子どもも同様ですよね。〝なぜもっと早く発見できなかったのか〟という事件がたくさん起きています。
ペットと人間の子どもは、よく似ていると思います。社会的弱者である彼らを守る意識と仕組みが、日本は大変未熟です。これだけの事件が起きているのだから、本来であれば劇的に変わっていなければいけないはずです。声なき声に、耳を傾けなければいけません。
―一般家庭での閉鎖的な虐待のほか、近年では元税理士が野良猫をガスバーナーであぶって殺め、その動画をWebで流すなど、サイコパスとおぼしき虐待が報道されています。
杉本 きっと昔から、動物虐待は世界中で起きていたのでしょう。近年ではネットやSNSの普及により、可視化されやすくはなりました。虐待の目的や残虐性は、時代の病理的なものと関連性があるかもしれません。これらが適正に裁かれないと、どんどん悪化していく可能性もあります。
実際に5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の「生き物苦手板」というサイトでは、動物虐待を愛好している人たちが集り、その残忍性を競うかのような投稿がされています。
その中では「いまの法律上、動物虐待は重罪ではなく、軽微なもの。自分たちが動物を殺めたところで、大した罪には問われない」というやりとりも実際におこなわれていました。
―そういうサイトは、野放しにしていていいものなのでしょうか。
杉本 それを取り締まる法律は存在しません。運営者の判断で、記事が削除されるのを待つのみです。サイト閉鎖を願う署名活動などがネット上でおこなわれていますが、賛同を集めたあと、その先にどう繋げるかが大事だと思います。
しかし、ネットに上がっている画像や動画は、警察に通報する際の確かな証拠になります。そのような画像や動画を直視することは精神的に大変辛いと思いますが、ぜひ管轄の警察に証拠を示し、通報してください。ネットの場合、全国どの場所で虐待事件が起きているかその場ではわかりませんが、多くの人が声を上げることで、捜査に結びつきます。
次回「【動物愛護管理法】改正について」は、 6月1日公開予定です。
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http://www.eva.or.jp/